オーディオブック 梶井基次郎 「檸檬」
――その檸檬の冷たさはたとえようもなくよかった。その頃私は肺尖を悪くしていていつも身体に熱が出た。その熱い故だったのだろう、握っている掌から身内に浸み透ってゆくようなその冷たさは快いものだった―得体の知れない不安に心をおさえつけられ、好きであった音楽や丸善に辛抱がならなくなる。誰もいないところへ逃れたいと願い彷徨い歩いていた折、以前から好きであった暗い果物屋に珍しく並んでいた檸檬を目にする。ただひとつだけ買ったその檸檬は、不思議と心の不安を和ませ、心を幸福な感情で満たしていった。
■著者プロフィール
梶井 基次郎(かじい もとじろう)
1901〜1932。
大阪市西区生まれ。近代日本文学の古典的存在とされる。高校時代エンジニアを目指していたが、その後文学に傾倒し東京帝国大学文学部英文科に進学。1925年(大正14年)、同人誌「青空」を刊行し、代表作「檸檬」を発表。その作品は、自身の病気を題材にすることも多く、私的小説的な作品が多い。1932年(昭和7年)、肺結核のため死去。享年31歳。命日の3月24日は、その代表作から、「檸檬忌」(れもんき)と呼ばれている。
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