これでいいのか神奈川県
本書は、2017年に刊行した『日本の特別地域 特別編集76 これでいいのか神奈川県』(以下前作)を加筆訂正の上文庫化したものである。
神奈川県と地域批評シリーズの関係は長く深い。2009年に最初の『これでいいのか神奈川県横浜市』を刊行して以来、実に本書で文庫版を含め15冊目となった。取材活動は12年目である。
しかし、神奈川県はその個性も実力も強大なため、どうしても横浜、川崎など、各地に特化した内容となってしまっていた。そんな中で、本書は初の横断的な『神奈川本』となった。その分、各地の内容は凝縮されたものとなり、触れられない話題も多くなっている。
だが、本書ならではの強みもある。特に大きいのは歴史に触れられたことだ。
神奈川県は、ご存じの通り武家政権の故郷である鎌倉をもち、多くの武士が発生した土地だ。神奈川を飛び立ち全国に武士達は散っていったため、有名な武家のかなりの割合が、神奈川県にそのルーツをもっている。
そうした歴史を踏まえて現在の神奈川をみると、なるほどと思うことがある。
神奈川県は常に先進的で、日本の未来の形を提示してきた。鎌倉、横浜開港、歴史の大きなターニングポイントとなった事件の多くは神奈川県で起きている。
しかし今、日本を導いていくべき神奈川県で起こっていることはなにか。各地の巨大な再開発、タワーマンションとショッピングモールを中心としたまちづくり。今度も日本の「流れ」を先導している。だがそれは、より良い方向なのだろうか。大発展を続ける神奈川県内にあっても、発展から取り残された「ダメな街」は存在し、大規模な開発で生まれた街、変化した街はことごとく「どこにでもありそうな」画一的な「イヤな街」になっていないだろうか。
本書は、制作が新型コロナウイルス感染症の拡大期とかぶってしまったため、「改めて県内をくまなく歩き回り」とはいかなかったが、可能な限りの取材を行い、これまでの蓄積とあわせ、多くのデータを分析した。
今神奈川で起こっている変化と現状は、本当に正しいのか。まばゆい開発に隠された課題はあるのか。これから神奈川はどう変化しようとしているのか。
足早ではあるが全力でまとめ上げた。是非楽しんで貰いたい。
(※ページ数は、680字もしくは画像1枚を1ページとして数えています)
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