レビュー一覧

幼馴染の高校生のお話。アオハル感は薄いです。拗れに拗れて悪態しか吐けなくなってしまった有佐(受け)と、未だ恋に気付けず受けの態度にイライラを募らせるばかりの敷(攻め)が、反目しながら すれ違いながら 求め合うラブストーリー。コメディタッチの軽快な文体ですが、素直になれない受けの胸の内や、恋に気付い後の攻めの狂おしい思いが切なくてキュンキュンです。

『心を半分残したままでいる』や『言の葉の花』など砂原さんの作品は大好きなのですが…　うーん、残念ながら楽しめる作品ではありませんでした。読んだ後で2003年の作品に加筆されたものという事を知り納得。まずは幼稚園から幼馴染である主人公のDKふたり。ちょっと鈍い（よく言えばおおらか）な攻めと意地っ張りの美人受けというのは良くあるパターンですが、この有佐のひねくれ具合が度が過ぎてる。醤油1杯貸すにも料金請求しようという守銭奴ぶり、シャイで人付き合いの上手い方ではないのに”別れさせ屋”という？？な商売、片想いの惣一の気を引くために広海を巻き込んで”アパートの隣室を借りる””男女を部屋に連れ込んでるふりをする””Hの（ふり）声をわざと聞かせる””他の女の子とデートしてる場面を見させる””酒を飲ませて誘惑する””嘘をついてクリスマスの福引を当てさせる”等々、17歳の高校生とは思えないやり過ぎのオンパレードでうんざり。十何年も付き合いのある惣一の鈍さを知っていながら、こういう作戦で上手くいくと思っていたのが良くわからない。小中時代はわからないけど幼少時の可愛く素直な有佐を知ってる惣一が呆れて離れていくのが自然のような気がするんですが…　そしてそんなひねくれた有佐が惣一と結ばれて素直で可愛くなるかというと、貴重なデレが見当たりません。口を開けば嫌味と憎まれ口ばっかでいくら美形でもこりゃ可愛くない。実母を継母だと嘘をついたりする意味がわからない。幼い頃は父親がちゃんと仕事をしてなかったせいで貧乏だったんだろうけど、今は金持ち子弟が通う高校に進学してちゃんと一人暮らしの費用も出してもらってるんだろうから、守銭奴設定いらなくないですか？SSではもうちょっと素直になった有佐が見れるかなあと思っていたのですが期待したほど甘くはならず、これから先も有佐が変わらなければ惣一が相当鈍くないと付き合っていけないんでは？といらぬ心配までしてしまいました。

なんともかわいい勘違い。王道なストーリーなのに飽きずに読める作品でした