恋する個人秘書 華麗なるシチリア I
愛しいボスと火遊びなどできない。わたしはきっと、灰になってしまう。
日曜日の朝6時、電話が鳴り響く。「エラ、今すぐ来てくれ」サント・コレッティの個人秘書として働くようになって4カ月、時間外の呼び出しには慣れっこになっていた。イタリアなまりの強い、深みのある低い声が寝起きの耳を愛撫する。どんなに傲慢で、わがままで、女ぐせが悪くても、サントはシチリア名家の御曹司として眩しいほどのオーラを放ち、エラの心を惑わせる。ボスにこんな感情を抱くのは禁物なのに。いいえ、それもあと少しのこと。エラは仕事を辞めようと思っていた。だが駆けつけた先でサントのある姿を見たとたん、エラは胸をつかれ、彼のもとを離れることなどできないと悟った。もしかしたら、永遠に。
■豪華な作家陣で贈る8部作〈華麗なるシチリア〉、トップバッターはいま大注目のC・マリネッリ。
(※ページ数は、680字もしくは画像1枚を1ページとして数えています)
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