神童
名門音大目指し浪人中の和音は、一人の野球大好き少女と出会う。彼女の名は成瀬うた。軽快にドビュッシーを弾きこなす天才少女ピアニスト! 音の出ないはずの漫画という表現手段なのに、あなたの心に美しい音楽が鳴り響きます!
現代の薄っぺらい音楽に流されてしまっているあなたにクラッシック音楽の素晴らしさを教えてくれる珠玉の作品です。
(※各巻のページ数は、表紙と奥付を含め片面で数えています)
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エディターのおすすめ
電子書籍販売員として紙書籍のことを触れるのはあまりよろしくないことですが、タブーを犯します。紙書籍で10年程前に読みました。
その後10年間、それなりの数の漫画を読んできましたがこの作品は個人的ランキング1位です。
始め「絵が…展開も盛り上がりもない…」と少々否定まじりで読み始めたのですが、気付くと涙が出ていて驚きました。「感動」や「悲しい・苦しい」の感情とは違い、知らない感情が昂ったような…良い本を読んだ時の感動と、良い絵画を観た時の感動と、良い音楽を聴いた時の感動がいっぺんにやってきて素晴らしいものを感知する身体の機能が最大限に刺激されたかのような複雑なものでした。何が良いのかよくわからず読んでいたので、初めて読んだ時は出てきた涙にとにかく驚きました。抑えた表現なのでありとあらゆるところにある素晴らしさに気付かず、感情の奥にじわじわ直接訴えかけてきたようです。
主人公のピアノの天才小学生・「うた」の生意気だけど憎めない人柄は虜になります。うたの感情は豊かな表情と音楽で表されますが、その表情の描き方が少ない線ながら気持ちの的を射ています。うた以外の登場人物も皆人間臭く、この絵のタッチでここまで深く描けるのはとんでもない画力だと思います。華麗で丁寧な絵ではないですが、漫画としての魅せ方は卓越しています。演出も「憎い」ところがあり個性的で、この表現は芸術の域…と言っていいものか、言いたいです。そして作者の並々ならぬ音楽への愛情がこの作品に全力で籠められているのもひしひし感じ取れます。1話ごとに副題のついたストーリーの終わり方の鮮やかさ、物語ラストへの伏線としての緩やかな盛り上がり方。読めば読むほど、この作品の偉大さを強く痛感させられます。あまりに好き過ぎてハードルを上げ過ぎたかもしれません…今回の日記は一個人の最高の作品になっている漫画への偏愛日記として温かく見守って頂きたく、ハードルを上げずにこの作品を読んで頂けたら幸いです。
(編集:安田|作成日:2013/3/26 )