レビュー一覧

　最も心に残ったところはヒーローの正直さでした。ヒロインに許しを請う勇気がなかったと告白する一方で、死んだ妻が出会った女性の中で一番美しい、あれほど美しくなければいくら破産から家を救うためでも結婚したかどうか自問する、と。この一時の気の迷いが７年もヒロインから自分を遠ざけた理由だというのもよく理解できました。この告白を受けたヒロインも素晴らしかった。愛するのを止めたことはなかったと。いやあ、この度量の広さには参ります。この箇所だけで、星5つ進呈します。あと意外な犯人にも。

この作家さんの中で一番好きな作品。何度も読み直しました。愛し合っていたけど不幸な事情から結ばれないまま、再会するところからストーリーは始まります。捨てられたと思っているヒロインが冷たい態度で接することにヤキモキするヒーロー(そりゃそうだろ)。でもほんとはずーーっとヒロインを愛しててヒロインの絵を持ち歩いてたり(笑)二人が再び心を通わせていく段階がとても良かった。そしてこの作家さんが書く「良識ある子女」ヒロインはとっても魅力的ですね。

お互いに愛し合いながら結婚できなかった主人公達のお話です。察しの良い方はその理由がすぐにわかると思いますが、物語の後半になるまで真相は語られません。ヒーローを襲う事件が次々と起こり、なぞ解きの要素も加わり、物語の展開に引き込まれます。脇役達も好感度が高く面白い作品なのですが……どうも最後１ページの締め方が納得いかない。続編があるのか急に物語と関係のない人物の名前が出てきて、だからどうした？！って感じで終っています。それさえなければ良かったのに、とても勿体無いと感じました。

『初恋の紳士』と言うタイトルから、乙女チックなふんわりした話なのではと思っていたら、「人生、一寸先は闇」的なシビアな話でした。ヒーローの責任感と自己分析が男前です。ヒーローは、自分には非の無い事で若いうちから家の責任を負い、結婚も「一瞬の気の迷い」でエライ目にあい、もう修験者のような苦行と忍耐の日々。責任感の塊の様なヒーローなのに、何故かヒロインにだけ臆病で無責任。ヒロイン兄の死をきっかけに、やっと自分の人生とヒロインの愛を取り戻す為にあれこれ頑張ります。そんなヒーローに、暗黙の了解でナイスアシストする家族と使用人が、「ヒーローとヒロイン大好き」過ぎてとっても素敵です。

英国の作者さんだけあって英国の歴史背景がきちんとしていて、よく其の時代のことを勉強されていると思います。

出てくる人々が素敵な人ばかりで楽しめたのですが、事件の真相を明らかにすることに比重が置かれていて私にはロマンス要素が少なく感じました。ドキドキもときめきもあまり感じられなかったので無期限にはしませんでした。

紳士というより、策士ですね。ヒロインを手に入れるために、呼び寄せたり、一緒にいられるように後見人使ったり、パーティーさせたり。7年も待たせたんだから、ひざま付いてもいいと思う。アンアシュリーにしては、2人の関係がかなり進んでます。珍しい。そして、最後の終わり方がイマイチよくわからなかった。次があるってこと？そこがマイナスです。

初心な少女が失恋を乗り越えて自分の力で生きる女性になっていたところがよかったです。