アンとアキの関係は、家族でも友人でも恋人でもなくて、その全てであるのだな、と思いました。ティーンエイジャー特有の潔癖さと純粋さ、繊細さと強さを備えが二人が出会うべくして出会い、紡いだお話です。母親に疎まれるあまり、現実逃避をするように憧れのマリーアントワネット風ドレスに自らを装い、不都合な現実から目を逸らして生きてきたアンと、祖母を愛するがゆえに、祖母の秘密(実際の秘密はアキが思っていた通りではなかったけれど)を抱えた家と共に朽ち果てていこうとするアキの二人は、お互いがお互いを真っ直ぐに愛し、愛される相手をただ求めていたのだな、と感じました。ドイツ人の血を引き、ドイツからの帰国子女であるアキのような存在は、徳島という土地で生きていくうえで、とても異端であったと思われます。幸いなことに彼女の親しい周りには、偏見や嫌悪を抱くことなく、アキを一人の人間としてみてくれる人ばかりでありましたが、本当の父を知らず、義父を慕ったあおいの育った環境は特に厳しいものだったのではないでしょうか。共依存のような家族ごっこ(どちらもがお母さん)から、様々な人との出会いと別れを乗り越えて本物の家族になった二人には、きっとつつましくも幸せな日々が続くのだろうな、と予感させる再会によって締められたお話に暖かい気持ちになりました。秋と俘虜たちとの交流については、ややご都合すぎるかな?とも思いますが、日本で最初に歌われた第九(だったと記憶しています)にまつわるエピソードが、現在につながるan die Freudeであるなら、この話は最初から歓喜をベースにして進められた、二人が喜びを手に入れる話だったのかもしれないな、と最終話に描かれたアンと祖母との再会、あおいの秋への感情の昇華と、アキとあおいの過去からの解放から思いました。
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この作品、ちょっと異質な感じで、とっても心にのこります。主役の?ふたりがそれぞれ謎めいているし、徳島の魅力も感じるし、さらにフランス?ロリータ??・・・続きが気になってます!