レビュー一覧

罪の重さに対して、刑の重さが見合っていないと、常々思っています。裁判員制度が導入されても、市民感情がきちんと反映されているとも感じられない。公平性だの人権だのが主張されて、犯罪被害者の方や遺族の方の望み通りの刑罰は課せられない。被害に遭った方が理不尽な思いを強いられるのはやっぱり納得がいかない。

理不尽な犯罪で大切な人の命を奪われた被害者家族の心の動きを、ここまでていねいに描いてくださったことに感謝します。これを描くのには大変なエネルギーが要ったことでしょう。亡くなったお父様がどんなにりっぱな人だったか、血のつながらないお父様を作者や作者のごきょうだいがどれほど愛しておられたか、作品全体から伝わってきます。つらい内容の話ですが、読後感は不思議にさわやかです。裁判の場面で語られた、犯人が判明した経過にも感動しました。現場に残された小さな遺留品から、時間も手間もかかる地道な捜査を続けて犯人にたどり着いた警察。ドラマや小説では、名探偵や名刑事が華々しい推理をしますが、リアル世界の警察官はこんなに地味な努力を続けておられるのですね。

考えたこともない日常がやって来ることにたいして考えさせられました。絵のタッチが軽いので内容は重いけど読みやすかった。

テーマとしてはとても重いものを扱っています。被害者家族の現実を脚色なく描くとこうなるのかと感じています。ただ、絵と描かれているシリアスさがかなりのミスマッチです。亡くなったお父さんの目が大きすぎてキラキラで非常に違和感を感じました。

絵は決して上手ではないけど、犯罪被害者家族でなければ描けない内容。不祥事や失態ばかりが報道される警察がしっかり地味な仕事をしていることを知ることができたのも収穫。

家族を殺され悲しみが癒えぬまま、永く続く裁判や、犯人や家族への憎悪に苦しめられた筆者が、周囲や家族と助け合いながら、苦しんだままで生き続けても、いつか乗り越えていけるという、同じような経験をしている人々への励ましのようで読み応えがありました。ただ筆者はデビュー5年以上のプロにしては画力がちょっとひどく、特に人物の表情は全てが同じような顔が並ぶという、シリアスな実録マンガで説得力が伴わない箇所もあるので、そこは残念です。

重たく辛い内容ですが、細かく丁寧に書かれていていろいろ考えさせられます。

お父さんのこと、本当にお悔やみ申し上げます。そのことで一度は倒れても、また立ち上がり自分の力で世に伝えようと漫画にした、作者さんの心の強さに感銘を受けました。お父さんもきっと喜んでいられると思います。と同時に、本当に犯人が憎いです。どうか犯罪のない社会になりますように。

愛する家族が、ある日突然いなくなる。それだけでも耐えられない出来事なのに、殺されたとなると…。作者の悲しみ、苦しみがひしひしと伝わってくる作品でした。

知り合いにこれと似た経験をされた方がいるので、読み進んでいってその知人のことを思い出しました。著作さんの絵が軽いタッチなのですが、それが妙に胸にきました。どう立ち直っていかれるか、気になります。