誓約の傷
組長の次男として生まれた藤堂耿輔は七年ぶりに家に戻ってきた。兄が一か月前に何者かに殺され、跡目を継がざるを得なくなったのだ。ヤクザとは無縁に生きたかった彼の帰宅には、ほかにも理由がある。実家には耿輔を引きつけてやまない人物――若手ながら優れた美貌の彫り師、降旗漣がいたからだ。
漣は同系列の組長の息子だったが、少年時代に抗争で両親を失い、藤堂本宅に引き取られる。そして刺青の修行を積みながら、漣の兄の囲い者となっていた。そのような苦境にありながらも、常にしたたかで前向きに生きる漣の姿は、耿輔にとって憧れだったのだ。
今、この世界で生きるための証しとして彼に墨を入れてもらおうと決心した耿輔には、兄を殺した犯人探しと、漣をわがものにしたいという二つの思いが去来していた……。
雑誌掲載された表題作のほか前日譚にあたる商業誌未発表「緋牡丹断章」を一挙収録!
※こちらの作品にはイラストが収録されていません。
(※ページ数は、680字もしくは画像1枚を1ページとして数えています)
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