山河遥かなり

第2次大戦直後、アメリカ占領下のドイツ。この地の国連救済所にナチの収容所から救い出された一群の子供たちが送られて来た。その中の一人、カレル・マリクは、何を聞かれてもドイツ語で「知らない」と答えるだけであった。彼は、チェコの幸福な家庭に育ったが、ナチ占領下に家族は離散し、母のハンナとも無理やりに引きはなされてしまった。その悲しみにカレルの心はうつろとなり、喋ることも忘れてしまった。赤十字の病院車で特別収容所へ送られることになったカレルたちだが、彼らは病院車に乗れば毒ガスで殺されるというナチ時代の経験を思い出し、恐怖にかられ途中脱走を計った。その頃、カレルの母は愛児をたずねて当てのない旅をつづけていたが、とうとう気を失って倒れてしまった。一方、ひとり放浪するカレルは、アメリカ兵ラルフ・スティーヴンスンに拾われた。カレルは次第に正常さをとり戻し、自分にも母がいたことを想い出し、母を探しに家をとび出した。