ひそやかな略奪
空が白み始めたころ、ケイトリンは目を閉じたまま、隣に横たわるマシューの腕に頭を預けていた。出会ってまだ日が浅いため、マシューの詳しい素性は知らないけれど、誰かにこんな気持ちを抱いたのは初めてだ。恋人に裏切られて以来、二度と恋はできないと思っていた。でも、彼とならばもしかしたら……。そのときマシューの携帯電話が鳴り、彼が寝ぼけまなこで電話に出た。
「リース・モーガンだ」
ケイトリンは凍りついた。リース・モーガンですって? 聞き覚えのあるその名前が、ケイトリンを奈落の底に突き落とした。
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