現在2巻

みくまりの谷深

著者小川幸辰

ジャンル：青年漫画
長さ：177ページ
4.0 （2人） 2

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作品詳細

著者小川幸辰
発行 KADOKAWA
ジャンル青年漫画 SF・ファンタジーホラー・オカルト
レーベル HARTA COMIX
シリーズみくまりの谷深
紙初版日 2017年11月15日
レビュー
4.0 （2人） 2

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1994年に講談社のアフタヌーン誌にて発表された小川幸辰の『エンブリヲ』は、虫とヒトとの共生を主題とした“生物學（バイオロジカル）ホラー”として人気を得、2008年には出版社を代えてエンターブレインより復刻版が刊行。新しい世代のファンを獲得し、その色あせない魅力が再び評価された。
小川幸辰は、その徹底的にリアリズム的な筆致によって、紙の上に現実を描き上げ、そしてミステリ・オカルト的な幻想との融和を果たすことに成功している。
今回の作品は出版社から「『エンブリヲ』の精神的な続編の執筆」を依頼されたことにより企画された。千葉県・印旛沼周辺の河童伝説を題材とし、実際には生息していないはずのもの、しかし多くの報告が寄せられるものを漫画で描き上げることにした。
物語は3話から構成される。第1話＆2話は80ページ強。しかし第3話は186ページとなった！　この重厚かつ真摯な作品は、一度雑誌に連載されてからまとめるのではなく、直接、単行本描き下ろし作品として発表されることになる。
舞台は東京都心と国際空港を結ぶ土地に拓かれた“万葉ニュータウン”。照葉樹の暗い森に包まれたこの街で連続失踪事件が起こった。犯人の特徴は、全身をうろこでおおった、まるで獣のような……。
唯一無比の民俗学（フォークロリスティクス）ホラーとして、小川幸辰による共生の物語が、ふたたび刊行！

（※各巻のページ数は、表紙と奥付を含め片面で数えています）

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5
fivesevenさん

2021-03-18

※このレビューにネタバレが含まれています。
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かつて「エンブリヲ」に魅了された者にとって、この作品を読まない選択肢などはありえません。あの世界観をもういちど堪能できること請け合いです。どうぞ迷わず飛び込んでください。民俗学もさることながら、人類学的な考察まで展開してくれる面々が、「エンブリヲ」の生物学部を彷彿とさせて登場します。彼らがあなたをムラムラさせることでしょう。同作品にもあった、虐げる者と虐げられる者の対立の構図も受け継がれていますが、この物語における後者が、我われ狭義のホモ・サピエンスとは異なる人類との混血種族であることが、より作品に複雑さを投げかけています。つまり、差別の問題です。我われもネアンデルタール人の遺伝子を受け継いでいるため、本当は前述の〈彼ら〉と同じ立場なのですが、物語の中では〈混血であることを差別されたくない人々〉が最も烈しく〈彼ら〉を差別し、その絶滅までも画策します。ここにはいわゆる民族浄化の、ほとんど滑稽でさえあるメカニズムがえぐり出されていることにお気づきの方も居らっしゃるのではないでしょうか？〝誰かをイジめている間は自分はイジめられない〟〝誰かにレッテルを貼れば自分はレッテルを貼られない〟という、子供じみた論理と同じことを、大のオトナが必死でやる訳です。もちろん〈彼ら〉には法の下の平等や人権が適用されるのか？という議論が前段階で無ければならないため、作中で行われたことが直ちに〈虐殺〉とはならない―と、作中の総務省も考えたであろう理屈を強弁することも可能です。しかし、それには覚悟が要ることになります。我われの法や人権の代わりに〈彼ら〉を守っているものが厳然として存在しており、異なる原理にもとづいたその報復を受けることになる―かくて物語はカタストロフィに向かいます。この作者は、共生をテーマとするにあたって苛烈な対立から物語を描いていきますが、その必要上、警察の機動隊・ＳＡＴなどや自衛隊が単純な暴力装置として登場し、兵器等の描写もそれ相応のものです。なのでたとえば「シン・ゴジラ」を礼賛してやまないような向きの方にとっては、価値観の相違を感じられる事もあるかもしれません。しかし私などは、警官が〈彼ら〉を容赦なく〈駆除〉していくシーンは、沖縄の基地反対派住民に対する公権力の振る舞いようが思い浮かんで、一瞬、かえってリアルにさえ映りました。〈彼ら〉の聖域がとこしえにこの地上に残らんことを―

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