チ。―地球の運動について―
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エディターのおすすめ
このマンガは本当にすごい。ここ10年くらいで最も心を揺さぶられた作品です。
現在は書籍の形が紙から電子への移行期。そしてこの作品が取り扱う時代は、活版印刷が世に出た頃の東欧。C教正統派によって異端が火あぶりにされる世の中で「地動説」に目覚めた人たちが、この異端思想を後世に残そうとする物語です。
今に生きる私たちは「地動説」の信奉者ですから当然主人公たちに肩入れします。しかし異端思想者たる主人公たちは異端審問官に追われ、とうとう悲劇的な最期を迎えます。
ただそれでも「地動説」だけは後代に遺そうとする。私たちは切れてしまいそうな糸で繋がった「地動説」に胸をなでおろし、そして次の主人公の時代を迎えます。そしてまたハラハラします。
要するにサスペンス作品です。連載中は今回も何とか生き延びた感でいっぱいでした。
そしておすすめポイントは長尺の台詞。この作品には対話や問答の末に長尺の台詞が出てきます。これが普遍的で叡智の結晶ともいえるもので、味わうほどに深い台詞なのです。
一部を抜粋すると、
"もし……過去の積み重ねの先に答えがないなら、真理にとって我々は無駄だったかもしれん。しかしたとえ…誤ちでも何かを書き留めたことは、歴史にとって無意味ではない。"
など、何度読んでもグッとくる台詞が沢山あります。そして自らを省みてしまいます。
また、歴史フィクションの作品は数多くありますが、メタ的に人の歴史そのものをテーマにした作品は珍しいと思います。興味を覚えられた方はぜひ読んでみてください。
(編集:殿山|作成日:2022/12/28)