レビュー一覧

「名作」と呼ぶべき作品を久しぶりに読みました。絵も、ストーリーも、構図も、台詞も、すべてが緻密に計算され尽くされていて感嘆しきりです。まるで一編の映画を観ているような感覚で、読み終えた後は拍手したいような気持ちになりました。「only you, only」もとてもよく出来ていたのでこの作家さんの力量は分かっていたつもりでしたが、絵や話の雰囲気が古い時代設定にマッチしていてますます良かったです。主人公二人の愛のかたちは美しいの一言。見事に伏線が張られていて、季節がめぐる中で感情や台詞がリンクしていくさまに胸が震えました。しばらく余韻に浸り、また何度も読み返したいと思います。

出会いの春から、それぞれの季節を通してゆっくりと繋がっていくふたりの心が、慎ましい時代の背景とともに描かれています。ありふれた優しさを宝物のように大事にしていたこの人に、もっと特別なものを受け取っていいんだよと言ってあげたい。自分が特別なものをあげたい、そういう気持ちを愛っていうんだなと思いました。松岡の仕事は確かに色んな人を傷つけてきて、そういう罪はいくら懺悔しても消えはしない。誰だって恵まれた環境に生まれて愛されて育って世の中に貢献できる人になりたい。でもそういう人がたくさん受け取っている愛も、かけらも与えられない人もいる。言い訳しながら悪事を働くのは大嫌いですが、悲しい悪人にも愛をあげたいと言ってくれるひとに出会えたら、そう思える物語でした。

元商家の使用人と跡取り。寒い日に自分の息で指先を温めてくれるような味わいがありました。優しくされた、たった一度の記憶を宝物のように大切にしていた松岡。人として、まっすぐな優しさを無くさなかった東。時代が時代なので貧困さのなかには殺伐とした場面もありますが、全編を通してお互いの相手を思う気持ちが心地好い作品でした。読めて良かったです。

はー、ずっしりきました。ページ数も多めだけどそれ以上に濃かった気がする。麻生さんの描くお話は丁寧で大好きです。時代物で身分の違いがあった頃のお話なので、サクサク進んでくれないところもまたいいです。受の坊ちゃんは初めの頃はやる事や考え方が本当に幼くて素直。玄関に松岡の靴があるだけですごい嬉しがるところは、こちらまでピュアさに浄化されましたwそんな幼い坊ちゃんも東京に行ってからはどうやったら松岡のそばに居れるのかをきちんと考えてるのがいい。ヒロイン脳でそばにいたい！危ない目に遭ったら助けてもらう！ではなく、心配させたら松岡はきっと自分を遠ざけるっていうのを分かっていて、自分のすべき事をちゃんと考える。男らしい。松岡の見た感じはスマートで何でも出来そうなのに漢字が書けないのもまたいい。萌えます。お祭りから花火の一連がとても素敵でした。お祭りの時の坊ちゃんからの告白もぐっときたし、今まで一生懸命自分の想いや裏の汚い顔を隠してきた松岡の秘めた欲望がぶわっと溢れ出たいいエロスでした。たぶんこのお話はこれからも何度も見返すと思います。

内容が濃く、何度も読み返しています。麻生さんの次作が楽しみです。

儚げな表情とかHシーンの色っぽさとかには大満足です。キスシーンも最高です。が、やはり松岡の仕事については最後まで引っかかりが取れませんでした…。東がそれについてあまり葛藤しないのにも、「良い子」という設定なのに、とちぐはぐな印象を受けました。

よくあるような話なのに描く人によってこんなに違うのかと思いました。

ときどき「ん？」て思う瞬間があるんだけど、ふわっと霞むような筆致にうっとりさせられて読まされてしまう、という感じ。「ん？」って思うんだけどねぇ。作者ご本人が目を通すことはないと思うけど、ひとつだけ「顔に変な斜線入れるのヤメテ（つたわれこの気持ち）」（笑）

作者買いです。他意無く与えられた一度の優しさ。その一瞬に救われた恩に報いる為、一生を掛けて愛を注ぐ攻め。四季の移り変わりとともに幼かった受けの子もそれを受け入れ、応えようと成長していく様が丹念に描かれます。綺麗で優しい中にも背徳感や死への伏線を匂わせるのが、この作者が好きな理由ですが今回も期待通りでした。ただ、ほんの少しだけ何かが物足りず、それがわからないモヤモヤもまた、この作品の味なのかもしれません。

じんわりじんわり純粋で優しいお話で、高評価レビュー通り良い作品です。が裏稼業とあるように暴力的な描写もありますので苦手な人はご注意を。１つ１つのエピソードが淡く余りドロドロした所までは描いてないので胸が熱くて痛む程の感動はありませんが読後感は良いです。台詞やモノローグでテンポ良く読ませるタイプではなく絵で状況を丁寧に描写してるのでページ数の割に短く感じます。48時間レンタルならチケット払ってもいいかと思います。