レビュー一覧

暗いお話です。死亡事故、喘息の発作、育児放棄、里親、下請け工場勤務、そして季節は冬、と明るい要素は何も無い中、お話が進んでいきます。生活の様子がリアルで、もともとはゲイでは無い二人が想い合う様になる、そういう事もあるだろうな、と思わされました。

最初読んだ時、共依存という言葉が浮かびました。お互いに家族の影を求めてる感じです。きっかけが娘の事故死だけに色々とやるせない…。事故を起こした(保育園バスにぶつかってきた)相手は亡くなってるので、感情をぶつける先が氏家先生しかなかったんでしょうね。今後、二人にはいっぱいいっぱい幸せになって欲しいです。

重い。重いです。BL枠では括れません。とにかく重い。特に前半は、娘を事故でなくした攻め視点で話が進み、その藁にもすがる気持ちが同じ親の自分には分かりすぎて、読むのが苦しくて仕方がなかった。心に傷を抱える受けと共依存ともとれる形で、二人はハッピーエンドを迎えるが、その幸せの中にも、ぴんとはりつめる、いつ切れるかもわからない緊張感を感じました。

すき、とてもすき。誰にも言えないその言葉を本音を九官鳥にだけ告げる、その『すき』が舌っ足らずの小さな子供のようで、鳥にしか言えないその心がいじらしくて苦しくて切ない。受けの志信くんは喘息の発作から過去に脅え、初めての温もりに触れて、一方で攻めの北川さんは失った温もりを思い出す。本編は攻めの北川さん視点で進むので肉親を次々に亡くして泥に沈んでしまいそうな彼の苦しみがずっと続くのでかなり辛いです。孤独に潰されそうな二人が互いにしがみついてもがいて唯一の存在になっていく過程に心が震えました。一生背負い続け深い傷を抱えながらも生きていくしかない、でも生きてて良かったと二人で温もりを分け合いながら心から笑えるだろう終わりかたたに救われました。