レビュー一覧

どうしてこの作家さんはここまで人の、普遍的な心理を描くことができるんだろう？どうやったら、大人になっても思春期の苦しみや心の移り変わりを覚えていられるんだろうか。大島弓子さんの作品は心の奥深くを撫でる。と同時に描かれる女の子は女の子の夢のようだ。こんな風に生まれたら、本当は、別種の苦しみを負わなくていいのに。夢のような女の子たちを見て、いい大人になった自分が、華奢な身体を持たない女の子に戻っていく。素晴らしいけれど、苦しいな。

精神の淵際の少女に泣けるほど優しく寄り添った傑作です。ひたすら優しい。毒というよりつるつるの壁にたてた爪のような懸命さをふんわりと詩的に語るところが最大の魅力です。傑作です。

この作家さんの描く世界はなかなか一筋縄で理解できませんが、そこが好きなのかもしれません。風景が心情とクロスされて心の中に入ってきます。いつまでも読み返したい作品です。

読んだ当初はそれほどでもなかったのですが、今読み返してみるとなんだかすごい。私が好きなのは庭の薔薇の茂みのエピソードと「薔薇の木に好きって言ってもらえるなんてるなんて夢にも思わなかった。」という言葉が終盤つながるところ。それからラストの「生まれてきてごらんなさいな。最高に素晴らしいことが待っているから。・・・・わたしは自信たっぷりに子供に答えていたんです。」という姉の沙良の夢にまつわる言葉が忘れられない。

傑作ですよね。何度読んでも面白い。読むたびに新しい発見がある。優しさの中に毒があります。

名作ですね。なんて愛おしい登場人物なんでしょう。久しぶりに読みましたがやっぱり素敵。

紙の本も持っていて何度も読み返している大切な漫画です。表題の作品について。主人公の少女が自分自身で生み出している内なる恐怖みたいなものにいまだに共感。でも思い込みつつも進みゆき、結果安らぐ場所を得る彼女はいつまでも眩しいです。ふんわりした絵柄とはうらはらにかなりのテンポ。静かなる怒涛の展開に流されるのも快感です。

「草冠の姫」がいちばん好きです。起承転結、よくできています。この作品を執筆中に、作者の知人が亡くなり、作者がアルファベットで、そのことを書いているコマもあります。

高校の時に読んだのですが、手放してしまっていたので再度購入しました。以前読んだ時は主人公衣良を風変わりだと感じましたが、今読んだら内面の透明感に圧倒されました。そんな彼女を理解して寄り添う峠兄妹と、親だからこそ生きづらそうな娘を心配する衣良の両親など、周囲の人たちの思惑もよくわかります。何度も読み返したくなる名作です。

大島弓子先生の一番脂の乗った時期の作品です。何十年も前のお話にもかかわらず、輝きは色あせません。収録作品：バナナブレッドのプディング／ヒー・ヒズ・ヒム／草冠の姫／パスカルの群れ/あとがきマンガ(2p)