レビュー一覧

日本人は悲恋物語が好きだ。アンデルセン童話の人魚姫が好きだ。ジョーズに代表される鮫の恐怖映画が好きだ。そしてメイドが好きだ。其れ等をミキサー(フードプロセッサーでも可)にかけて、京都府伊根町辺りで熟成させた御伽噺。くれぐれも、吸血鬼成分とバンド成分が混入しない様に注意すること(混入すると「夜明け告げるルーのうた」に成る)。非常に削ぎ落とした話運びのため要点が明確で、場合によっては物足りなさを感じるかも知れない。そんな処も良い意味で童話的と云えるだろう。１、２巻で完結しているが、一冊に纏めた方が良い内容である。どちらかと言えば短編作品だと思う。個人的にはよく纏まった無駄を削ぎ落とした良作。

人魚との恋愛物語と言うと元祖のアンデルセンの影響からか破局に終わってしまうイメージがあるけど(手塚治虫氏の原作版「海のトリトン」とかくりぃむレモン「サマーウインド」とか)この作品は今の所ほのぼのとしていて周囲の理解もあってまったりにっこり読み進めます。異種族ゆえに本当にこの恋愛が成就するのかお互い内心不安に思っている所も良いです。