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かなり過去を舞台にして描きあげる小説に「歴史小説」と「時代小説」があるそうである。現代まで残された史実に基づいて描くのが歴史小説で、もっと自由に想像力を羽ばたかせるのが時代小説だそうである。本書は大変に厳密な意味での「歴史小説」である。ユダヤ人大量虐殺という悲劇を生み出した男、ラインハルト・ハイドリヒをそれほど感情を交えずに描きあげている。その書きぶりからハイドリヒの冷酷さ狡猾さが際だっている。同じハイドリヒが描かれた須賀しのぶの「神の棘」との対比も面白い。