レビュー一覧

貧困の中、奨学金を得て大学へ進学することを目標に、いじらしいほどに頑張っている若い二人の物語です。惹かれ合う描写も素晴らしいし、中盤の切ない展開といったら！胸が締めつけられます。二人の愛の行く末はエピローグで描かれ、大満足でした。

初めて読んだロマンス小説が本書です。日本でも昨今取り上げられている貧困が原因による職業や学歴の格差社会、ヤングケアラー問題、同性愛などを織り交ぜた高校生男女の純愛物語です。日本の恋愛小説やTL小説ではなかなか書かれない現代社会の深刻な課題や問題を取り上げるのは、さすがアメリカの小説ならではだと思いました。特に最近の日本のTL小説は非現実的(セレブ、スパダリ、転生系)なストーリーが多く、そういった類のTL小説に辟易していた自分とって本書はとても面白くラストまで一気に読み切りました。本書の原題はヒーローの名前ですが、本書を最後まで読むとその理由が納得。ヒーローのヒロインに対する誠実すぎる愛が素晴らしい。伏線が散りばめられているというより、ストーリーを読み進める毎にヒーローのヒロインに対する深い愛が分かっていきます。また、訳者あとがきにも書かれてましたが、人生の豊かさには物質的な富は関係ないという本書からのメッセージにも心が打たれました。所々に官能シーンがありますが、個人的には文学性の高い恋愛小説だと思います。以下は少々ネタバレになります。主人公ならびに他の登場人物数人が男性から強姦まがい・ぞんざいな扱い(いわゆる、ただの性欲の捌け口)をされる描写があります。これらも貧困地域におけるリアルな実情なのだと思いますが、このような描写が苦手な方はご注意下さい。