レビュー一覧

私は百合属性ゼロです。これはそうゆー感じではありません。本当に質の良い一つの映画を観たような読後感でした。きよこの「仕事ができない」ことに関連して障害と思われることからマイナス評価をされている方がいらっしゃいますが、下巻を読んでいないからです。断言。「女が自立できれば結婚なんて不公平な制度を選ぶ必要なんてなくなるんだわ」結婚に対して「嫌いよ。」「家に縫い付けるなんて」これらはすべてきよこの言葉です。そのきよこが結婚を選ぶ。それしかできなかった。どれだけ身が千切れる思いだったでしょう。家の仕事を馬鹿にしているのではなく、これまでの経験から家のことならできると判断できるわけです。そしてこれも「時代」なのでしょう。障害だなんて思いもしない。いや、むしろ障害だとなってしまったら今とは比べられないくらい偏見の目に苦しむことになる。そんな時代。性質が女学生時代と入れ替わったようになったのは仕事のせいか愛のためか能力のせいかその全てか、どれも関係ないか、、。長くなってしまいましたが、そんなことはこの作品の傷ではなく、いや、特筆すべき要素ですらありません。ひとつ不満をいうとしたら、上巻は48時間コースがあるのに下巻はそれがないことですね笑もっといろんな人にこの作品に触れてほしいです。無料サンプルだけではなく怖いくらいきれいな空に心を奪われるほどに。

作家買い。作家さんが好きで購入したんだけど、過去形になってしまったなぁ。序盤や冒頭のね、『認知症になっても好きな人』とか『小指を交換する』とか『血縁にさしたる愛情はない』とかすごく刺激的でロマンチックなんだけど、途中（４話辺り）からいかにもフィールヤング的で腹を立てて読むのをやめてしまった。貴代子が見合い結婚を決めた理由が今で言うところの軽度の発達障害（ADHD）なわけだけど、内容紹介ではそれを『悲壮な理由』と説明してる。学校に通っていた間には問題が見つからなかったくらいだから軽微な障害だと思う。知育に問題ない程度の軽度発達障害なら仕事してる人はいくらでもいるし、悲壮なことでも何でもない。それを理由に仕事には就かず結婚するという選択も感じ悪い。仕事は無理だが主婦なら問題なくできる、という言いぐさ。そうでしょうか？私は主婦ではないけど、あまりにも主婦を軽視しすぎでは、と感じてしまった。しかも、その発達障害という理由を説明することなく結婚を決めてしまうのは、ミツに対する裏切りと取られても仕方ないと思う。事後報告で発達障害を説明して何とか縁を繋いでも、肉体的な婚前交渉がミツにバレてしまう。最悪だよ。その最悪な行動は発達障害からくるものではない。人間性やお人柄。貴代子はミツだけを愛しているとは言うけれど、一度もミツの気持ちになって考えたことはない。ミツの気持ちを考えられたら、たとえ発達障害の発覚が辛くとも結婚なり何なり相談してから決めただろうし、婚前交渉だってしないだろう。良くある陳腐な台詞になるから言うのも嫌だけど、貴代子には『ミツを愛している』という形骸だけしかない。時代背景だの障害だのを理由に、ミツの幸せや気持ちについて考えない。学生時代の幸福だった記憶の象徴としてミツを求めているに過ぎない。その形骸化した執着だけを老後も残して、ミツの許しに甘えている。あまりにもミツが気の毒だし、貴代子の愛と呼ぶのもおこがましい気持ちにゾッとした。気持ちの悪い人だなって思って、作家ごと無理になった。百合作品には評価の甘い私でも下巻は買わないと思う。フィールヤング的だと評したのは、女のそういう形骸化した執着心や自己愛を禁忌（今回は同性愛だが、他には近親そうかんやら何やら）と絡めてロマンスとしてもてはやす傾向にあるのがフィールヤングなので。

二人の人生の終わり頃からはじまり、場面は過去へと遡っていく。ひとつひとつの世代のお話がその時代の苦悩と幸福に彩られて、二人の人生に寄り添っているかのように感じた。重く、靄がかかったような場面が多く、じっとりしている。読み手を選ぶかもしれないが、文学が好きな人には是非読んでほしい。

作家買い。なかなかない百合だと思う。映画を見たような読後感。ものすごく引き込まれて読んだ。1930年代に生まれた二人の女性の一生。時代背景や当時のジェンダーのありよう、社会と女性にも触れており、勉強にもなるし、色々考えさせられる。二人の生き方が対照的なのもいい。かなり下調べした上で描かれたのではないだろうか。こんな百合が描かれるというのはやはり裾野の広がりを感じる。あと、値段設定は高くはあるけど、価値はあると思う。

とても面白かったのですが、もう少し長く読みたかった！二人の女学生時代、プラトニックでしかありえないような恋、そして時代や日本の女性が置かれてきたポジションを色濃く反映した二人の卒業後の人生をもう少し詳しく読みたかったです。ストーリーそのものはとても感動的だと思います。絵もきれいです。日本だからこれは1930年代生まれの女性たちの話として書かれるので、世界には現在でもこのような状況の国や社会が多々あるでしょう。同性愛が犯罪とされる社会もあります。生まれた時代、国が異なれば誰にでも起こりうることだと思い出させてくれる作品だと思います。誰でも生まれた時代・場所で一度しか生きることができないというのが切なくなる物語です。

賛否両論ありそうな内容ではある。個人的には好きだけど…結局のところ死んでからじゃないと一緒になれないっていう。よみおわったあと、いろんな感情がぶわーっとでてくる。時代的なことがすごく悔しく感じる。そういう時代だからしかたない。になるのかもしらんけど、台詞でもあるように生まれる時代がちがえばよかったのかな？でも、それだと別人。全くその通りで、やっぱりこうなるしかなかったっていう虚無感。そのなかにも各々の気持ちがちゃんと生きていて、深さがあって単なる虚無感だけではないという…やや矛盾した表現になるけど…。自然と涙が出てきてしまった…。

Twitterで話題になってたので即読みにきました。認知症で記憶が前後いききする様と二人の70年の回想とがうまく組み合わさって本当に一本の映画を観たような気持ちになりました。色んなことの描写力が凄い。百合要素はあまりないので属性ない人もするするっと読める斗思います（私もないです）

美しい物語でした。時代考証も心情描写も見事でした。最初の二人の性格が昔と入れ替わっているのも見事でした。現代から始まり戦後に向かって現代に終わる。お話の流れも素晴らしいです。

二人で寄り添って生きていきたいだけなのに時代が許さなかったのが辛い。

美しい過去の話だからこそ現在の状況がやるせなく感じます。