レビュー一覧

一人のイキガミにただ一人のドナーだと愛情持っちゃう関係はたしかに難しいですよね。交流がなければ起きない問題が起きるのでグッときます。この設定のBL(狭義で)は私は読んだことない気がしますが、でもな〜、あまり現実とかけ離れた設定だと回収が難しいな。救いがなさそうに思える前半に比べ終盤は拍子抜けするところがいくつかあって苦笑い。いやー、私はそういう決断好きだけども。重大な決断に対して環境面が都合良すぎたかなぁ。BL的にはイキガミとドナーの唯一無二の関係は治癒効果だけじゃなくて体液が甘かったりいい匂いを感じたり、セオリー通りの萌えはあると思います。救済的にも。あと既刊でも思ったんですが、作者様は子どもを描かれるのがお上手。今読み終えて一番に浮かぶシーンは発熱した幼い鬼道がさすさすしているところ…でいいのか笑。暫く目が離せませんでした。泣ける〜。

ゴメンナサイ！評価低めです…山中先生の作品は凄く好きなのです。この作品もイキガミとドナーという特殊な設定や世界観は群を抜いて素晴らしいと思います。でも、こんなに秀逸な設定なのに、もっと良く出来たはず…と偉そうに思ってしまう私を許して…それだけ山中先生に期待してるんです。もしかしたら私がこの方の描くSFとは相性が悪いのかも。500年の営みでも感じたのですが、どうしても府に落ちない箇所が引っかかってしまう。この方の作品って現実的な日々の中での背景や人物の感情描写は抜群なのですよね〜凄く繊細で慈愛に溢れている。どうしてもそちらと比較してしまう。この作品も凄く良いんです。イキガミとドナー、常に孤独や生と死をヒリヒリと感じながら、その中でお互いを慈しむ様になる二人。良いんですが、私の中でそれな！と思ったのは、2巻の滝さんの言葉。''鬼道、吉野組はベタベタで鬼道だけズルイ。普通のイキガミとドナーは1回くらいしか会わない''…本当なんかズルイよ…しかも後半のストーリーの急展開。柴田！もっと早く行動しろっ！ってツッコんでしまった。前半は凄く鬼道の生い立ちや環境、吉野との関係性の葛藤に引き込まれていたのに、後半でスッと覚めた感じ…ハッピーエンドでしたが、500年の営みの時と同じように自分の中ではすっきりしない感情が残りました。

ある日突然、適正を見出され、国家のため自己犠牲を強いられる人々。資源として補償はされても、そこに自由意志はない。10歳で「イキガミ」となった鬼道の心は、愛されたい子供のまま。中学教師である「ドナー」吉野は、教え子よりも幼い鬼道に慈愛を抱く。その愛は鬼道を人として成長させ…。義務と適合でパートナーになった2人が、有事のなか愛を育み、幸せを手に入れるまで。未来設定のSFなれど、現在の国際情勢、連綿と続く破壊と創造の歴史を背景にしたリアリティのある世界観です。それだけに問題山積。安全保障と移植医療…収めたような零してるような。愚かな私達が破壊をやめられず、賢き私達が創造を諦めないなら、凡庸な私達は愛と寛容と想像力を…と思う。ちょっと冷静に読んでしまいました。

設定は切なくて良いと思います。ただSF設定を支えるためにもっと絵で見せてほしかったかなというのはありました。どうにもフワッとしてて…イキガミ同士の戦闘シーンとか一部高校生のカツアゲシーンかと思ったところありました。終盤の展開も設定から連想するより随分ふんわり甘めなのですが少女漫画系BLとしては多分こういうのが正解なんだろうなと思いました。山中さん作品既知の方やちょっと切なめの甘い展開好きな方向けだなと思いました。

ストーリーがとても良いです。胸に迫る切なさを感じさせてくれる作品でした。一気に上下読んで、映画を観たような読後感。綺麗で雰囲気のある絵も、各国が超人的な能力を持つ人（イキガミ）を有して争い合う近未来の世界観によく合っていました。愛を知らない孤独なイキガミの鬼道が、自分にとってただ一人のドナー（傷ついたイキガミの体を回復させられる適合者）である心優しい吉野の深い愛情によって愛を知っていくいくその表情も、ぐっとくるものがありました。Hシーンも色気があって、二人ともとても幸せそうで気持ちよさそうなのが良かったです。周りの登場人物もそれぞれの過去や想いなどの背景を感じさせて、魅力的なキャラクターが多かったです。特に柴田さんがいい。イキガミ達の、なぜ戦うのか、何を守りたいのかという戦うことの意義に対する問いかけと、自分が傷つくことがたった一人のドナーに、場合によっては大きな負担をかけてしまうことへの不安と葛藤が苦しい。一方で、教師である吉野が生徒たちに出した宿題「10年後の未来への自分への手紙」は、書く生徒たちの少し恥ずかしそうな、でもキラキラとした表情。吉野自身の作文も幸せな未来で溢れていて、明るい未来を想像することの大切さを感じました。これは読者の生き方への問いかけにも通じるものがあるんじゃないかな、と思います。さらっと読んだりじっくり読んだり、何度も読んで楽しみたい素晴らしい作品でした。

SF設定を借りてはいるがシンプルに成長物語でラブストーリー。すごくストレートに胸に響きました。子供の時イキガミになり、人としての情緒が置いてきぼり状態な鬼道。イキガミ判定がどの年代なのかというのはその後の人生を左右しますね。子供で判定を受ける過酷さが世界観にマッチして気持ちが入りやすかった。対して、ドナーの吉野は教師という設定がとても良いバランス。強烈な個性に惹かれながら、成長と自己肯定を促していくところは「恋人」の前に「ちゃんと向き合う大人」。意識が遠のくなか「こっちにおいで」と鬼道を呼ぶシーンがとても好きです。愛を認知しない彼に「君は私を好きなんだよ」と導くシーンはどこか神聖にも思えた。あと単純に、鬼道がカッコよかったですね。退勤後、彼氏がフワッと隣に舞い降りるなんて最高。しかもスーツ＋コートのビジネスマン仕様なんて萌えでしかないな。後日談はもっと下さい、と思いました。

物語の主軸をラブストーリーからブレずに描ききってくれて本当に良かった。どこまでも考察出来そうな世界の表層、美しい薄皮一枚の物語です。内容が浅いと言ってるのではありません。イキガミという名の生物兵器とドナーと呼ばれる平和の為の生け贄。これが青年誌で掲載されていたなら、奪われ続ける彼らの痛みと苦しみに耐えられず、私はきっと最後まで読めなかったと思います。ご都合主義的にも感じられるラストですが、諸国の思惑と武器商人達の圧力(原因が明らかになった後では対イキガミへの戦闘兵器も開発されるのでしょう)を考えれば着地点としては妥当なのかもしれません。彼らが落ち着くには多分もっと時間は掛かると思いますが。身も心も全てを惜しみ無く与えられる吉野君という存在は、愛を知らない鬼道君に与えられた唯一無二のギフトです。もしかしたら吉野君は鬼道君じゃ無くても良かったのかも、と思わなくも無いのですが、それでも二人は出会い恋をしたのです。この物語ではそれが全て。どうぞ命有る限り、愛のある未来を共に歩んで欲しいです。本当に読んで良かった。ここまで読んでくださった物好きな方、どうもありがとうございました。長文失礼しました。

設定は物凄く素敵なのですが、どうにも詰めが甘いというか。バトルシーンや背景が薄いのには目をつむるとしても、最後、ハッピーエンドへ向かって行く展開が安直すぎる。ゆっくり丁寧に勿体ぶって欲しかったなあ。同じ内容でももっとこねくり回せたはず。人間兵器といえば、20年ほど前に話題になった青年漫画が印象的だったので、そっちを読み返したくなりました。

上下巻読みました。未来な話だけど現実離れはしていなく、大切な人への想い思いやり命とはみたいな、とても感情移入しやすい出来る話で一気に読めました。胸がギュッとなるお話で。あと先生も鬼道もかっこかわいかったです！

うーん、設定が面白そうなので上巻を購入してみましたが、イマイチでした。話の展開が冗長でありきたりのように感じましたし、上下巻に分けるほど内容が濃いようにも思えず、下巻を買うのをためらっています…。また設定についても「イキガミへの輸血・臓器移植等の行為はドナーのみが行える」のは面白いとは思いましたが、読んでいくうちに、粘膜同士（キス）である必要性への説明には弱いし、未来設定なら人工培養等の技術が進んでいるのでは？粘膜同士の接触によりドナーからイキガミへウイルス等を移してしまう可能性があるのでは？ドナーが見つからないうちは有効な治療・抗体接種が出来ないのに普通に外に出て任務についているのは危なすぎるのでは？と、いろいろ疑問が湧いてきました。試し読みを拝見したときにシリアスなSFで設定も凝っているように感じて、期待し過ぎたのかもしれませんが、ちょっとがっかりです。下巻の購入は他の方のレビューを待ってから考えようかと思います。