レビュー一覧

腰を据えて人間を描く、という覚悟が無いと戦争前後の作品は描けないと思います。人物の線の全てからその覚悟が匂ってきて、圧倒されました。とはいえ重く固い要素ばかりでもなく、スリルに溢れたエンタメ作品としての一面も。史実と虚構のバランスとりや、資料の少なさ等、なかなか難しいテーマだと思いますが、是非頑張っていただきたいと思います。続刊が楽しみ！

とても良い作品に出会えました。辛い戦争を生き延びただけでなく、戦後のこれだけの混乱の中を私たちの祖先がどうやって耐え抜いて全てを再構築して来たのかを考えると、本当に頭が下がるし胸が詰まります。作中の『我々はみな協力しなくちゃならない、弱者同士支え合って生きなきゃいけない』という言葉に象徴される、人と人との繋がり・縁という物の大切さを改めて考えさせられました。実に作者の本領発揮というか真骨頂というか、勢いがあるのに丁寧に描かれた絵をじっと見ているととても愛情が伝わって来る気がして、ああ、この人は本当にこれが描きたかったんだなぁと心から感じました。続きも期待しています。

戦後の環境の悪さが良く分かる作品です。胸が痛くなる場面が結構あります。ですが、目を背けてはいけない現実だと思いました。

戦後まもなくの苦しい時代を背景に、人々の強く逞しい姿も描かれています。主人公も良い味を出しています。続きが気になって仕方がありません。

力作ですね。半村良の「晴れた空」をちょっと思わせる、スパイ養成校上がりの絶望した大人金井田と戦争孤児、兼吉との交流を描いた作品。少しずつ二人が距離を縮めていって二人で暮らしていくようになるまでが今出ている二巻まです。今日子やしず子といった女性たちも魅力的。伊藤がどうなるのか気になります。少女漫画チックな絵柄とストーリーがあまりあっていないようにも思いますし、好き嫌いのわかれる絵だとも思いますが、一度読まれるには十分魅力的な作品です。

力作です。この時代の事を描こうとしたら資料も集めるのが大変でしょうし。史実とかけ離れても面白みがなくなる反面フィクションとしての面白さも大事だし。戦争孤児の悲惨さや身体を売ってでも生き残ろうとした女性たちなんて底辺の人物をどう描くのか続きが楽しみです。

久し振りに戦争時代の漫画を読みました。画は少し見づらいけど過酷な時代や人間模様をよく写していると思います。謎多き主人公が、他人である少年や、少年が出会った人達が酷い目に合ったところをかっこよく助けて、優しく見守る姿は魅力的です。良い作品に出合いました。

戦後の無常観、それでも強く生きようとする人々が描かれています。非常に力で強い作品だと思いました。

今と昔の価値観や環境の違いなどに驚きました。このように大切なことを教えてくれる作品が増えていくことを願います

戦後の闇市を舞台に元陸軍スパイが数々の問題を解決して理想の社会を目指して行く漫画。ヤッパや拳銃がガンガン使われるシーンでも襲ってきた相手を殺さないとかちょっと理想的すぎて左なのかとか思う部分もあったけど、陸軍中野学校・GHQ・中国人マフィア・朝鮮人ヤクザ・日本人ヤクザ・悪徳警察・パンパン・残飯シチュー・闇市・カストリなんかが登場して時代背景がよくわかってよい。見逃した直後に朝鮮人ヤクザが日本人を背後からドスで突き刺すという朝鮮進駐軍の極悪ぶりも良かったし、朝鮮人ヤクザに石を投げつけ日本から出て行けというシーンもよかった。最後はGHQ方針で権力を制限された日本警察が、ヤクザたちを利用しようと裏で動いたがそれを主人公が工作して、最終的には嘘の抗争を継続することで逆に警察とのなあなあ関係を続け、永遠にカモにし続けるというエダノンもびっくりな話で決着する。本来ならば、戦後の餓死者や暴動や風俗や治安の悪化や暴力の数々がもっとひどく描かれればよかったのではないかと思う。