レビュー一覧

オムニバス形式の作品。全編素敵な絵とセンスのいいセリフがあふれています。第二話「紫陽花の陰に猫はいる」では夫婦のあるゴタゴタが起きるのですがそれをこんなに美しく上品に描く作家は岩館さんをおいて他にはいないのではないでしょうか。

表題作のシリーズの中では、文沙子さんの物語がいちばん好きです。美人で何でも持っているように見えるのに、心の中に小さなもやもやを抱えている描写が秀逸。シリーズ外の「月夜のつばめ」はもっと好き。哲子お姉さんがプロポーズを断ったエピソードや、会社帰りの独白シーンが最高でした。

表題作は「五番街」という大都会を舞台に、3人の女性の恋愛模様を描いたオムニバスストーリーです。五番街は日本のようだけど日本じゃないような不思議で魅力的な街で、三者三様のストーリーは改めて読み返すとどれも面白かったです。特に1話目が心に沁みました。同時収録の「月夜のつばめ」も個人的に大好きな作品。岩館ワールドに浸れる一冊です。

オムニバスもので、それぞれ別々の話だけど、どこかで繋がっていて、それぞれが人には言えない問題を抱えている。岩館真理子ワールド全開の読み切り短編作品集でオススメです！