レビュー一覧

さすがよしながふみ先生。マンガがうまい…面白い…どれを読んでも名作です。味わい深いお話でした。

1番目の作品「シノワズリ」は短編ですが、心にぐっと刺さる作品でした。あとの作品は表紙のカップルです。美しい貴族とその執事、よしながふみ先生の作風と合っていて堪りません。露骨なエロ描写は無いのに色気がすごい。いろんな感情が湧いてくる1冊です。

わがままおぼっちゃまとクールな執事のお話です。メインカップルより、最初に出てくる貴族と中国人の話がもっと読みたかったです。

頭から終わりまで執事モノですよ、コレはフランス革命前後が舞台のガチンコの執事モノです。変に気取ったセリフなんかないのにドップリと当時のおフランスの世界観に浸れるのが先生の手腕ですよね。そう！その頃の貴族達に公娼や夫にも妻にも愛人がいるというのはベルばらなんかでも触れてあるし知ってたのですが、子供が出来るのが恥とはね。ったくオマエラ、遊び人気取ってやがってそんな事も知らねーのか！子供にゃ罪はないのに！とおもったけど、あぁ！遊び人なのにコントロール出来なかった、って事か。そこが遊び人として恥か。あ、顔面なんとかってその頃あったのかな？いやいや男女とも白粉してたから怒られそうだな、なんて妄想はアサッテ、シアサッテに。本作は「愛とは夜に気づくもの」、「本当にやさしい。」にバラけていた執事モノが一冊にまとまっていて時系列順に並んでるのでお得です。なかでもわたしは"シノワズリ"が1番のお気に入り。もうこのタイトルを思いつかれた時点で先生！天才です。短編なんですけどこの物語の幕開けにふさわしいステキなお話。そして伯爵の本気度にもキュンとしてしまった。そこから始まる歴史物の醍醐味、3世代につながっていきます。さすが後に「大奥」を描かれた方ですねー。

美しいのと血筋以外なんの取り柄もない我儘ぼっちゃんだけど一途でかわいい。おなかがすく感覚を知らないくらいクロードに尽くされて、それが当たり前のお貴族様。亡き父親にやきもちをやくところもなんかいい。死ぬまでその美しさを保ち続けて。クロードは、絶対ぼっちゃんより先にしなないで。…なんて思ってしまった。

遅まきながらの星5つ。もう作品の格と完成度が段違い。第1話はいわば本編のプレリュードですが、20数ページで時代背景から2人の地位の違いがもたらす束の間の関係（実に色っぽい）、務めを果たすことで感じる愛しさと微かな胸の痛みまでが、さらりと、しかも見事というしかない展開で描かれる。続く本編では親子2代に渡って支える執事の有能ぶりと、若き主人に振り回されながらの溺愛加減を存分に味わえる。ハラハラさせながら甘々のハッピーエンドに持ち込む手腕もよしながさんならではと感銘いたしました。是非。

BLの部分はもう言わずもがなですが、作品の舞台、時代背景が面白かったです。日本では貴族も革命も、主従も実感しにくいですが、歴史が感じられる作品でそこがいいと思います。

よしなが先生のフランス革命時のお話が大好きです！絵はもちろん、使用人達の主人に対する言葉遣いも、昨今のラノベの様なお粗末さも無く、この時代にすーっと入っていけます。アントワーヌはお子ちゃまですが、クロードをはじめ他の登場人物はそれぞれに人生の苦みを知っている大人です。彼等が物語に深みを添えています。

美しくて甘いフランス菓子のような作品でした。坊ちゃまがわがままで世間知らずでやりたい放題だけれど、それはクロードがいつもそばにいてくれるから。クロードが初めて愛した自分の父親にまで嫉妬しちゃう坊ちゃま、かわいい。でまたそんな彼に余裕で振り回されるクロードが嫉妬しちゃうところはまたセクシーでいいですね。革命もあっさり国外に逃れてしまうあたり、ちょっとあまあまだけれど、それもクロードの先読み力のたまものということで。

この作家さんの作品は、心の機微がとても上手に描かれていると思います。一つ一つの作品は切なくて深いし、ストーリーにつながりがあることで、趣もあります。ステキな大人な作品です。