レビュー一覧

ジンワリするお話でした。ヒーローは、施設や里親を転々として育ち、ヒロインは名家の祖父母に育てられるという一見全く接点のない環境で成人しますが、そういった表面的な違いが会話するごとに、触れ合うごとに取り払われて、2人の経験や体験から得る知識や、感性が少しづつ寄り添っていく姿がとても良かったです。

児童養護施設で育ち、家庭を知らないヒーローと母親を早くに亡くし、たくさんの規則のもと祖父母に育てられたヒロイン。お互いに最初から惹かれ合いますが、ヒロインの出生の秘密なども絡み合って少しずつストーリーが進みます。途中、ページの関係か祖母がなぜヒロインの母親の汚名をそのままにしていたのか、ヒロインと実の父親との再会までなかったのが残念でした。

二人が出会う場面が印象に残りました。ヒーローは今でこそ実業家として成功を収めた大富豪ですが、幼い頃に里親を転々としたり、愛情をかけてくれた大人がいなかったことから、自分自身しか信じられずに今の地位に登りつめ、心のどこかで満たされないものを感じていました。そんな時に母親に捨てられて厳しい祖母の元で育ち、自分を認めて欲しい為に自分自身を偽り、無理を承知で一生懸命、仕事に向き合うヒロインに心を動かされ、彼女の手助けをしてあげるうちに、お互いを理解し惹かれていきます。彼女の出生の秘密なども解き明かされ、読後感は良かったです。ただ、表現力が少し足りない気がしましたので、星一つマイナスさせて頂きました。