レビュー一覧

複雑で隠したいような過去（真実）を正面から受け止めた時、人は本当の意味で幸せになれる――作者はそんなことを言いたかったのかしら！？　美人でスタイル抜群でセクシーなテレビ番組の人気司会者ヒロインと、お金持ちでハンサムなヒーロー。幸せを絵に描いたような二人の結婚も、お互いに本心を隠している≪仮面生活≫だった。そして、その隠している部分を明らかにすることで、主人公二人も周囲の人々も幸せになれるという展開でした。リズ・フィールディングの作品は、常に冷静で淡々と物語が進行していきます（登場人物が激昂しないのが好きです）。重い題材なので、その冷静さが返って心に響きました。最後のハッピーエンドはちょっと出来過ぎかな〜という印象ですが、読む側の判断ですね。

ジーンときました。世間では女性としての成功者だと思われていても、偽りの人生に自信が持てないヒロイン。ヒロインを愛しながらも気持ちを告げられず、ヒロインのステイタスを上げる庇護者として振る舞うヒーロー。完全に仮面夫婦です。しかし、ヒロインが旅を通して自分自身の暗い過去と向き合い、人として、女性として、本来の自分自身を取り戻そうと動き始めると、いよいよこの時が来たか…と危機感を感じるヒーロー。ヒーローは、ヒロインの自立に理解を示しながらも、ヒロインを取り戻すぺく静かに周りを固めていきます。互いに相手の結婚理由が愛ではないと思い込み言い聞かせていたふたりが、ヒロインの自分探しを通して、互いの過去や気持ちを確認していく過程が、丁寧に描かれていて◎。ヒロインとヒーローのそれぞれの妹の存在は、やっかいですが、ふたりの絆を更に深めるきっかけとなりました。エンディングも充実。ふたりの素晴らしい第二章に心から「よかったね」と感じました。

ヒーローがとてもいい人でした。真面目な仕事人間かと思いきや。それはヒロインの思い込みで、お互いに自分を責めるタイプ。んでもってヒロインが好きで好きで、途中から仕事しません、この人（笑　ヒロインの抱えるものを、悪になっても全部受け止めて守りたいと思うような人です。ヒロイン主体の話だけれども、久しぶりに人のいいヒーローに出会えました。

本当は想いあっているのに、嘘に固められた仮面夫婦。言いたいことを常に秘めて、波風たてるより無難な関係を続けてきたヒロインが、偽りの生活と決別して過去と向き合う話です。話し合おうよ、と胸ぐら掴んで責めたいくらいまどろっこしいヒロインとヒーローなので、なかなか話が進みません。ヒロインにべた惚れヒーローが、不器用ながらもヒロインを取り戻そうと必死なところがかわいかったです。3部作シリーズの1作目で、設定やテーマも良かったですが、自己犠牲心の強いヒロインがあまり好みではなく、私にはちょっと期待外れでした。ヒロインがヒマラヤで友達になったシモーネがヒロインの2作目バーバラ・ハネイの「約束された出会い」の方が、バランスがとれているストーリーで、おもしろかったです。