レビュー一覧

読み終えた後、いつも「その内容が」心に残り、いつも考えさせられる作家さん。この作品も、ただ愛するだけでは終わらない話。恋人同士でいても同じ重さの愛情だとは限らないワケで。いつの間にか比重が変わっていることもある。それに気が付かなかったばかりに、独りだけ、奈落の底に落ちていく。そして這い上がり方を上手く、見つけられなくて、独りで、苦しむ。作中に「魔物になっていた」という表現が出てくる。堂々巡りのなかを生きるのは、そういう感覚だ。そして「それを」深く描いている作品だと思う。

とても良かったです！惚れた腫れたにとどまらず、人が自ずと抱え込む不安や孤独、また日々の生活のなかで人との些細なやり取りについ心患ってしまったり、また反対に慰められ勇気付けられたりと、印象的な描写が多くて感動しました。もちろん恋もばっちり描かれていて、この作家さんならではのエロっぽさが秀逸でした。物語の作り込み方も凝っていたと思います。次回作も楽しみにしています。

☆4.5 繊細すぎて自己に埋没気味の主人公…厭世観に溺れかけると掬い上げてくれる高校生。無神経だけど理知的な店長に、主体的な同僚達。他人との関わりを通して、幽霊の如き主人公も、内向から内省へと動き出し…自重しても抑えられない人恋しさ、少しずつ色付く店長との関係など、丁寧で味わい深い心理描写はじんときます。細部と要所に『銀河鉄道の夜』を配した本作。雄弁なモチーフに圧され気味ではありますが、人生においては誰もがジョバンニになり得、誰もが誰かのカンパネルラになれるという示唆があり、生き辛さを抱えながらも日々を生き抜く現代のジョバンニ達に、作者が送るエールのようです。

好みが分かれると思います。個人的には主人公がうじうじしていて好きになれませんでした。

最初主人公があまりに乙女で、というより後向きで共感もなにも出来なかったので、読むのをやめようと思ったのですが、結局最後まで読みきってしまいました。たまに、今どこにいるんだろ？という時があってページを戻ったりしたので、もう少し読みやすい線だと有難いとは思いますが、結果的には主人公が可愛く思えました。でもまた別れそうな想像をしてしまう…。一瞬の恋に全力な主人公が、ずっと幸せであってほしいと思いました。

これ皆さんに読んで欲しい作品です。読み終わって思わず、良い！(読んで)良かったぁーと声に出ました。３回くらい読み返してます。読み終えてホカホカな気分になりました。その後の二人をみたいなと思う作品です。

ん～、悪くありませんが、私のツボにはハマりませんでした。主人公のグズグズした感じがずっと続くのでウンザリしてしまった。

沁みた…めっちゃいい。本気で好きになった人に突然告げられる別れ。その人に未練があるわけじゃないけど、折り合いのつけられない気持ち。独りは寂しい、でも誰でもいいわけじゃない、けど、誰かがいてほしい。苦しくて逃げ出したくて、でも投げ出せないプライドがあって、そんな揺れ動く心情が切なく、そっと寄り添ってくれるカンパネルラに癒されます。そしていつのまにか側にいてくれる人と手を繋いで歩いて行く。人を愛する気持ちは優しい、愛おしい物語でした。

最初の今回は外したかな？と思ったけど何のその。彼氏にふられた泣き虫な主人公が、トラウマでずっと落ち込んでるなか、店長といい雰囲気になってついに一夜を明かしたものの、ノンケ店長の何気ない一言に傷ついたところを、通勤電車で出会ってた高校生が、それまでにも何度もあったようにただ一緒にいてくれて、冷静になっていく。この高校生のさりげない優しさ、爽やかさ、自然な明るさ、繊細さ、私も主人公とともに癒されたなあ。京山さんの誰も描かない、日常にあるはずの優しい世界が好き。

同じく作者買いです。レビューを見なくてもポチれる数少ない作家さんのひとり。今回も素晴らしかったです。2人だけの世界にとどまらず、人の繋がりを大事にした人間ドラマでした。月曜日の憂鬱さやちょっとした相手の許せない言動にメラメラしてしまう描写も秀逸。上司がちょっと狡そうな普通のおじさんなので心配はあるけど、主人公のピュアさが今度こそ良い方向に向かってくれたらと願わずにはいられない。高校生の方のお話もいつか読んでみたいなと思ってしまいました。ほんとに優しいいい子でした。