純文学・ロマンス・ホラー・コメディと様々な世界観を凝縮した短編集シリーズ第1弾。愛すべき主人公たちが織り成すヒューマンドラマが、時には悲しく、時にはおもしろおかしく、バラエティに富んだ筆致で語られる。

表題作「月を産む」は2000年1月、長崎新聞に全文掲載された。

17歳でスゴ腕エージェントと言われるルックが受けた任務は、ブラックダイヤ“黒い恋人”の護送……をする新人・チェルシーの補佐。可愛いチェルシーと一緒の任務に浮かれるルックだったが、彼女には大きな秘密があった。陸で、空で、海で、刺客たちとの激闘がはじまる！　チェルシーの秘密とは？　そして、二人の恋の行方は？

※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

「スプリング・ドリーム」
交通事故で死んでしまった“たま子”は、キュートでわがままな見習い天使。ある時、修行で地上に戻ったたま子は、大好きだった“ハルキ”に再会。「ハルキと永遠に離れたくない！」と思い立ち、規則に反してハルキを天国に連れて行こうと奮闘を始める。が……。
「ウィンターパラダイス」
天国に戻ったたま子の目の前に、ハルキとそっくりな男の天使“フユキ”が現れる。けれど、なんと彼はハルキとは正反対の「超プレイボーイ」だった！　天使・たま子は、はたして「永遠の恋」を手にすることができるのか？

※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

突然「ローズ」という源氏名で、風俗店で働くことになった幸。その足には、線だけで描かれた薔薇のタトゥーがあった。
“心から愛する人とめぐり逢えたら、色をつける”そんな夢を抱いていた幸は、客として訪れた誠と出逢い、瞬く間に恋に落ちる。幸はタトゥーを青く染めてブルーローズにし、誠は幸にプロポーズする。だが、幸には、夫と、夫の連れ子である子供があった。
二人は駆け落ちをする決心をするが……。

※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

病のため盲目となった雨宮鈴香は、日々を絶望の中で過ごしていた。そんな時であったのがクラシック界で『蒼きピアニスト』として活躍していた神谷兄弟の弟・透吾の奏でるモーツァルトのピアノソナタだった。
光を失ってしまった鈴香の心を優しく癒すピアノの音。その音にいつしか鈴香は憧れを持ち始め、そして恋に落ちた。
ある時、透吾に兄の将吾を紹介されるが、将吾もまた鈴香に複雑な想いを抱く。しかし鈴香は弟の恋人。自分のピアニストとしての未来を奪った弟に対する複雑な想い。嫉妬心とどこか膿んだような感情に突き動かされた将吾の取った行動とは……。
兄と弟、複雑な想いと関係を抱えた二人の間で、鈴香はどうするのか。弟の透吾とこのまま恋人として付き合っていくのか、それとも兄の将吾の手を取るのか――。

※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

大学二年・咲村聖良は、ひょんなことから、同性愛者の水沢伊織という三年男子とルームシェアすることになる。
伊織との楽しい暮らしの中、報われないと知りつつ、聖良はだんだん彼に魅かれていく。一方、伊織はホストの智也とつきあっていたが、バイセクシャルで自由奔放な智也に翻弄されていた。
想いに気づかれぬよう平静を装っていた聖良だったが、高熱で寝込んでしまった時に「抱きしめて」と、口走ってしまう。伊織も応じ、そのまま結ばれる二人。だが翌朝、彼は「忘れて」というメモを残し消えていた……。

※こちらの作品にはイラストが収録されていません。