ゆきうさぎさんのレビューリスト　

しばらくソーニャ文庫さんを離れていたのですが、一時夢中になっていた山野辺さんの作品に惹かれて読みだしてみれば、安定の歪みっぷりで素敵です。ヒロインに自己投影するもよし、メイドのジュ○アさん視点でお節介を焼きたくなるのもよし、楽しみ方はそれぞれだと思います。『涙を流す』と言う動作を求めてたまに無性に読みたくなる作家さんの一人です。久し振り過ぎて私の涙腺が非常にゆるかったのか、作品のパワーなのかは本編をお読みになっていただければと思います。

不遇な立場にあれども健気さと思いやりを忘れないのヒロインと、身分差のあるヒーローが初恋を貫く。藤波先生の作品はいろいろと設定が盛り込んであって、展開に予想は付きながらもホロリと涙無しには読めません。ストーリー重視したい方にオススメです。ヒーローの『騎士の誓い』のシーン…いいですねぇ。歪まない方がおかしい境遇の２人なのに、どちらも真っ直ぐで好感が持てました。

『軍服の渇愛』のスピンオフです。他の作品でも脇役を見事に活かして主役にしてくれる富樫先生ですから、『渇愛』でいい味を出していたフェリクスとライザのスピンオフが出ない訳がない！と思い、ずっと楽しみに待っていました。コメディ風に書かれた作品なので、ヒロインのライザが必要以上に傷つくこともなく、フェリクスに絡め捕られていきます。グレイシスが黒の狼ならば、フェリクスは金の狐で、その実体は知力と狡猾、そして隠された誠実さ。他のソーニャ作品に比べるとラブシーンは少なめかもしれませんが、ストーリーを楽しむことができると思います。ここまで来たら、残るは国王主役の作品を待たれるばかりでしょうか。何しろ事件の多い国ですから期待してしまいますね。★４なのはもう少しだけ歪んで欲しかった…と言う私の勝手な希望で、十分★５に値する作品です。

事件がてんこ盛りの前作「悪魔の献身」が好きで、作者買いをしました。イラストも岩崎陽子さんの漫画が好きだったので、読んでみたいと思ったのですが、自分がおじさま趣味ではないことを改めて実感した一冊でした。江戸っ子口調とおじさまと、明治が舞台の作品にはあまりそそられないようです。どちらかと言えば西洋ドレスと青年貴族様が読みたいとはっきりわかったので、良しとします。どこまでもヒロインを溺愛し、優しく接するおじさまがほろりと見せる弱気な顔がお好みの方にはいいかもしれません。サッパリとしたヒロインが好きなのですが、ヒロインが愛されていないと勘違いで壊れかけているところは苦手かな…？

「君と初めて恋をする」を先に読んで、そちらが大好きでしたので、作者買いをしました。ヒーローの喜怒哀楽が薄いことや、ヒロインだけへの執着は生い立ちからなのでしょうか。生まれだけを見ればもっと歪んでドロドロと育ちそうですが、幼い頃にヒロインと出会えたことで芽生えた恋心の過程は、本人に迷惑をかけないストーカーちっくな見守りで、ささやかなものです。もちろんソーニャ文庫らしく、きちんと暴走してくれますが…。ある程度先が読めるので、これが悪役かな？協力者かな？と分かりやすい展開で、ドキドキが少ないため、星はおまけで４つです。

何でこの作品がソーニャ文庫なんでしょうか…勿体ない！と失礼なことを思ってしまうくらい、よく練られています。○○性○○性障害の話は一昔前によくみられたので、半ば頃にはおや？と気付きますが、他にもいくつもの謎が織り込まれているので、文章の中から読み落とさないようにと真剣に読んでいました。もちろんラブもありますが、どちらかと言うとミステリ要素重視の方にオススメします。

ストーリー展開が読める。深みなし。ヒーローの執着は浅い。感情移入出来るほどの盛り上がりに欠けるかなぁ…と思われます。ヒロインに不幸があって、それを乗り越えて最後に優しいヒーローとハッピーエンド…で、いいのかもしれませんが、もっとソーニャ文庫らしさが欲しかったです。物足りない！不完全燃焼！残念！

『侯爵様と私の攻防』に続いて楽しく読める大好きなシリーズです。ストーリーもしっかり練られていて最後まで一気に読めます。評価が分かれるところかもしれませんが、ヒーローはヒロインを「あんた」呼ばわりするオネエ系であっても、優しくカッコイイ。私の中では文句なしの☆５です。ただ、他の方のレビューにもあるように、ヒーローの上半身の挿し絵は「ないわー！この顔にこの身体は反則だわー！」と思ってしまいました。イラスト込みで好きなのですが、綺麗な顔に細マッチョ…これだけは何とも言えません。

『君と初めて恋をする』でメロメロになっていたので、作者買いをした結果、前作の期待が大きかったためか物足りなさを感じてしまい、☆４です。その理由としては、メインの２人に感情移入が出来なかったこと、あっさりしていてストーリーにのめり込めなかったことが挙げられます。とは言え、前作のヒューの再登場を嬉しく思い、その人柄に触れ次作は彼が主役のハッピーエンドであって欲しいと勝手に期待をしています。本作での『歪んだ愛』とは、ヒーローはヒロインだけを欲し求めていたことでしょうか。記憶を失っても、もっともっと貪欲にヒロインを求めて欲しかったかなあ？やっぱり物足りない…。

ヒーローのことが大好きだけど、振り向いて貰えない。どうにもならない事情が出来て捨て身のアタックをしたものの、幸せな結ばれ方とは程遠い。前半のヒロインは泣きそうな程ですが、そんなヒロインを励まし支えようとする脇役達（フェリクス・ライザ）もキャラが立っていて楽しいです。フェリクスも良い人に見えてヒーロー達を利用しようとするあたりは、それなりに腹黒いのではないでしょうか。脇役達のスピンオフ作品があれば読みたいくらいです。半ばから後半にかけては、ヒロインのためを思って自制していたヒーローが何をしてでもヒロインを手に入れようとするところや、前半の冷たさが嘘のように優しく甘く感じられます。さらにストーリーに盛り込まれた事件を乗り越えハッピーエンドを迎えます。読み応えもあり、時々思い出した頃に読み返したくなる作品です。