べるがもっとさんのレビューリスト　

突然の両親の事故死よりもヒーローが元カノと寄りを戻したことが気になるヒロイン、という時点でドン引き。登場人物のほぼ全員が不快なキャラとかありえない。借りて損しました。

一言では「惜しい」出来。最近読んだ中では一、二を争うほど、主役二人のキャラ立ちが良かったです。形は違えど愛する人を失った旧知の二人が再会し愛を育む、このロマンスだけに絞った方が小説の質がもっと上がりましたね。だからこそ、妊娠発覚→取り敢えずプロポーズ→ヒロイン葛藤、でも受諾→色々→エンド、の安直な流れが残念でならない。ヒーローの過去に暗い影を落とす父親殺しの真犯人、もいかにもバレバレで却って興を削がれました。後、本作の彼の一人称はどう見ても「俺」、でしょう。

研修医（ヒロイン）が車で跳ねた男（ヒーロー）は銃撃されており、彼の拒否にあったからと救急車を呼ばずに家に連れ込み手当、という時点でもうね…。初対面の彼にあれこれ質問し詮索するおせっかいな性格も、HQヒロイン的にはアウト。好奇心旺盛な無神経おばさんにしか思えない。ついでに潜入捜査中に早々にヒロインと寝てしまうヒーローも、どうも敏腕とも思えないし。人気ドラマの設定を色々詰め込んでみました的で、全体的に底が浅い。主役二人の魅力も無さすぎる為、最後まで読むのが苦痛でした。

注：ネタバレしています。幼馴染の婚約者と良好な関係でありながら、初恋相手の彼の兄と互いに惹かれ合いベッドを共にしてしまう。やばい、地雷の穴兄弟ビッチヒロインを借りてしまったか？！（苦笑）と焦りました。結果、尻軽ではなかったけれど、本作ヒロインはどうも好きになれないタイプ。昔のヒーローの心無い言葉に傷つけられた所為か、万事に皮肉っぽく可愛気ない。もう一人面倒くさいのがヒーロー弟。いい人設定なんだろうけどどうもね…。偽装婚約理由も何だかな、だし。ヒロインと弟にあれこれ詮索され警戒されているヒーローが一番まともで受難、でした。直接登場しないならば、弟の上司がゲイという設定は不要では？

注：ネタバレに言及しています。此処でのヒストリカル初読み。複数人に求婚されるものの、その気になれないヒロイン。近所で銃撃（！）された貴族と知り合い、後見人となった美少女と彼の結婚を思いつく。苦笑必至な序盤から伏線皆無で早々に敵が身バレ。上流社会設定か紙数の都合上か、不要キャラも多すぎる。弟追跡は中途半端な冒険活劇みたいになっているし。加えてこの時代のレディお得意（？）の簡単に気を失う、のは逆効果。ヒーローもヒロインも自分を過信すぎての墓穴感が強く、苛々してしまう。後犯人の動機が心神喪失、は本格推理マニアには頂けません。ロマンス進行もヒロインの鈍感設定でスローペースになってしまい、微妙な印象です。本作に限りませんがHQとサスペンスの融合、は原作者の思う程には成功していません。

ＨＱ定番の身内の愚行の尻拭いに追われるヒロインですが本作は相当酷い。上院議員とつきあう為に会社の金を横領した妹、という設定からしておい！と言いたくなる。そんなバカに泣きつかれた姉は色をつけて返済し続け、で終われば話にはなりませんね。ボスとの愛なき結婚話があくまで主軸なのに、そこに脅迫ネタを絡ませるから非常に散漫な印象です。プロポ−ズ後主役二人が「このままセックスしたら…はぁはぁ」とばかり考えているのも…。その癖、「寝たら彼を愛してしまうから出来ないわ」とか言動不一致の自己完結型ヒロインだし。脅迫が更にエスカレートしても、妹は買い物依存症のままで「議員旦那にバレたら離婚されちゃうから、姉さん、ゴメンネ」とか。ヒーローの命を狙う、と言われてるのに自分だけで彼を守る決意をしたって…。ああ、もうアホか、こいつら！イライラ全開の稀有な作品。

突然、辞職を言い出されて初めて、ヒーローは彼女の価値に気づく。リゾート地に同行させ懐柔を図ったつもりが、ヒロインにどんどん惹かれ…。いつものボスと秘書のバカンス（笑）なんですが、目新しさ全くなし。いきなり勘違い系に変貌するヒロインと全く魅力的に映らないヒーロー、と後は驚くほど印象に残らない。借りなきゃ良かった（苦笑）

執筆時に行方をくらます人気作家の隠れ家を急襲したヒロイン。思いがけない来訪者に怒りを抑えきれない彼の背後には半裸の女性。冒頭からいきなり引き込まれますが、早々に美女の正体が判明し急激にトーンダウン。もっと疑惑で引っ張れば、ぐんと話が締ったのに。犬やヒーローの友達とか出てきても、凡庸で綻びが目立ってしまう。編集者と作家で知的な会話を楽しむ設定はいいけれど、引用が多く少々くどい。そもそもセフレ以上恋人未満で妊娠？ならまずは病院行こうよ。毒親迄は行かないけれど母親の影響大のヒロインは、行動的というより頭でっかちで独善的に映るし…。濡れ場のシーンもここなの？と盛り込みどころがずれている気がします。後、とびきりセクシーなハンサムでアスリートのようなベストセラー作家、というのがどうしても想像できませんでした（苦笑）

従順な秘書がやむなく妻を演じるのは南の島の滞在中だけー。もはや定番のオフィスの偽装結婚話ですが、本作はかなり異色。貧しく悲惨な出自から這い上がり地位を獲得したヒーローにとって、人間は二種類しか存在しない。利用する者と利用される者。両親を亡くし出来がいいとも言えない妹の為に尽くすヒロインを後者、と位置づける。ファミリーネームで呼び続け弄ぶ様に誘惑し、平然と彼女の孤独を抉り出す。ＨＱではもはや鬼畜に分類されますね。契約獲得の強要の嘘とヒロインへの姿勢が叩かれそうなヒーローですが、弱さや傷を持つ普通の男です。その辺を許容できるか否か、で評価が分かれるでしょう。孤独かつ不器用な二人の遣り取りには、胸の痛みも覚えますが自分的には二重丸。地味な彼女が変身しセックスの相性は最高だからプレイボーイの彼がゾッコン、みたいな話には飽き飽きしていたので猶更。

両親を暗殺され命からがら生き延びたシークとコンプレックスで青春時代を棒に振った図書館司書。妄想しがちの彼女の前に現れた彼は正に理想の男性に見えた。完璧なデートを重ねての後、二人は晴れて結ばれる。だが、全て彼の伯父と自分の父親が画策した利害一致の政略結婚だと知ったヒロインは激しく動揺し…。身内の事情最優先の彼と愛情を拠り所にしたい彼女。二人の温度差が無くなっていく様を丁寧に描いた良作です。処女のヒロインを誘惑する場面等、艶っぽさと切なさがいい具合に配合されてます。自分的には久々に満足。