ilwyさんのレビューリスト　

前半はサスペンス的な雰囲気もあってドキドキしました。でも、後半は妙に説明的に感じる文章が多くてあまり気持ちが乗らなかったです。真相が判明してめでたしで終わらなかったのはよかったですが、記憶の中の事実が二転三転しすぎて、心情がつかみづらかったです。最終的にヒロインが壊れた要因もわかりにくかったので、ヒーローがそうせざるを得なかった過程(ソーニャ文庫サイトの番外編で描写されてましたが、)は本編で丁寧に描写して欲しかったです。話が進む程、ヒーローはヒロインを守る事より自分の欲求の方を優先させている感じがして残念に思えました。画策するにしてもヒロインを危険な目に合わせない様にしてほしかったし、守る事を最優先に考えて欲しかった…。ヒロインを好きになった切っ掛け描写も無く、今悔恨する事がそれ？という思いもあり、ヒーロー視点の描写はイマイチ心に響きませんでした。全体としては面白くない事もないのですが、全般的に共感しづらい内容でした。あと、この作者さんの別作品、『水底の花嫁』と『みせもの淫戯』でもこういうのあったなとか思えるところがチラホラ。ヒーローが記憶絡みで真実を隠そうとする所とか、ヒロインが凌辱され、出口の見えない境遇に苦しむ所とか、似たような要素がどうにも気になりました。

内容的にはドロドロしつつも、わかりやすい展開と文章で読みやすかったです。特に仕草で心情が伝わってくる描写が好きで、本心を気づかれないように振る舞いつつも、優しさや愛情が見え隠れする場面のはさみ方が上手いなと思いました。ヒロインには狂気で歪んだ夫の悪辣な趣味に苦しめられるシーンが結構続きますが、合間に義弟と距離を縮めて想いを募らせていく過程もあって、嘆く描写ばっかりではないのが良かったです。あと、ラストが何とも効いてます。