ナミさんのレビューリスト　

DV被害という深刻なテーマを取り扱っていながら、トンデモ展開の連続、最悪のシーンだけ切り取った偶然の立ち聞きや目撃、思い込みによる誤解でストーリーが続きます。ヒロインはしばしば、真の強さや何をされても汚れないなどた評価されますが、流されやすく不安定で無責任です。ヒーローに当たる男性も主張がコロコロ変わります。絵柄は古く、登場人物たちはすぐ泣きます。よく、全員が泣いていたりします。緊迫したシーンでの説明的な長台詞が多いです。絵柄は古く、笑顔になると全員口が元気一杯な逆三角形になります。一番の問題は、心理的な抑圧やトラウマから、健康な人が一時的なショックから立ち直る程度の軽さで描かれているところです。軽い作品です。

まず絵柄がすごくいい。単純にきれいとかかわいいとかではなくて、雰囲気がすごくでていて、ヒロイン(悪役ヒロインというべき？)が生き生きとして魅力的です。この絵柄あってこそだと思う！！！キャラクターも、この作品のヒロインは、このジャンルにありがちな、「読者に近い目線の、現代日本では埋没しがちな、平凡だけど優しくてこの世界ではとても機転の利く」タイプではありません。ほんとすごいです。まじすごいです。各キャラクターの個性がはっきりしていて、敵役もパンチ効いてます。ストーリー展開は、いろんな意味で意外と生々しくて、設定と伏線もしっかりしてる、そして回収できてる。とにかく絵柄に表現される(悪役？)ヒロインがすっごくかわいい、魅力的、魔王もかわいい、周囲もかわいい、魔物がかわいい、そしてラストのラスト。おいピ○チ××おるやないけ……爆笑しました。探してください。

ノリとテンポと作画が絶妙にマッチしていて、だいたいどのページでも笑えるし、忍も若殿も可愛い。私はギャグコマで二頭身になったりデフォルメ顔になったりするタイプのギャグが嫌いなので、同じテンション（まがお）で進む、シリアスとロマンスとギャグが、文句なし面白かったです。NHKのサラリーマンNEOとかのノリが好物な人は、楽しめると思います。

悪意的で極端で低俗な冗談。確かに、注目を浴びることに余念なく、男性にどう見られるかという基準でおしゃれして、血眼で流行を追いかけるタイプの女の子たちは割と多く、SNSで飾り立てた自分を発信して、見て見てしてくる子とはだいたい話が合わないとは思っていますが、今の時代に一流企業に勤務している成果を上げている女の子が、こんなに思考力が死滅しているというのは、ありえない。「美人は頭が悪い」とか「成功しているのは男に媚びているから」という同性の、僻みややっかみを、商業的に掬い上げているだけではある。が、成功した他人の墜落は蜜の味、性格の悪い美人がひどい目に遭うのを楽しみたいのは人間のさがですから、これを面白がる自分は性格が悪いなあと重いながら、面白い作品だと思います。

ヒロインとヒーロー（王子様）のキャラクターがすごく魅力的。シリーズ二作目で、一作目に登場しているヒーローは、お堅く、融通が利かず、強引で絶大な権力を持っている、お美しい高貴なお方という風です。が、本作を読むと、アッ君は天然なのだね？という、庶民と感覚が違うキラキラ感に、なるほど納得と思わず笑ってしまう、格好良くて可愛い王子様です。対してヒロインが、正義感が強くとても優しくて、行動力がある手強い妖精風というのが、それはこの二人は惹かれ合って当然。ちょっとネタバレになりますが、ヒロインには、ヒーローが無意識に女性に求めていた全て（恋愛的意味合いだけでなく）を持っていたんだな、と感じます。このヒロインが王妃になってその後どう活動していくのかを想像して、いい王妃様になるだろうなと嬉しくなるような作品でした。

この作品は、この作家さんが描かなければ、原作は結構つまらないお話なのかもしれない。ヒロインが、ロマンスの王道、「勝手に誤解、勝手に思い込み、勝手に怒って落ち込んで悪い選択をする」タイプです。そのものはあまり好きな展開ではないのですが、このヒロインがそれをするとかっわいいのなんの！絵柄がとてもきれいで、私好みだからでもあるのですが、ブッと噴出して許してしまうヒーロー（王子様）の気持になって、このヒロインをどんどん好きになってしまいます。王子様は一途でやんちゃで冷静な、割と非の打ち所のないタイプですが、ヒロインの行動に追い詰められたシーンは迫力があって、ドラマチックでした。シリーズ三作の最終作品で、偶然の出会い要素が結構強いですが、全体的におとぎ話風の雰囲気に仕上がっているおかげで、出来すぎ、とは感じません。落ち着くところに落ち着いて、良かったね、とヒロインの肩を叩いてあげたいかんじ。

商業的な成功を研究して、読者の萌え欲求に忠実に応えた作品というのではないでしょうか。荒唐無稽に近く、ヤクザ組織の現実味に乏しく、展開もご都合主義で「？？」となりますが、バックボーンに拘らずドラマと萌えだけを求めるのなら、面倒は端折ってあっていいのかも。私の好みではありませんでしたが、途中まで買った以上最後までとりあえず買う、という感じ。たとえばヨネダコウさん辺りの世界観を好む方には、物足りないと思います。

内田春菊さんの作品は、なにか不快なんだけどなぜか魅力的で、という微妙な綱渡りで名作が生まれていたと思うのですが原作に回って作画を任せてしまうと不快感が強くてあの「怖い物見たさ」的な魅力がぜんぜんない雰囲気のない内田春菊って品性下劣で社会に対して悪意的なだけなのと違うか……作画が悪いというのでは全然なく、ただ他の内田作品に比しても深みのない内容から雰囲気まで抜いたらこうなんのか、という感じ

絵は確かですが、なんというか……感情移入できないかも。ヒロインは冷たい態度の下に傷ついた心と体を隠しているわけですが、前半で泣くシーンが、涙が出ているだけに見えて、展開を飲み込むのに読み手の想像力が必要ですし、ヒーローの感情が興味から愛に変わる過程はさっぱりわからない……。村田先生の絵柄はクラシックで重厚なストーリーを膨らませてくれますが、今回のようなテンプレートなヒーロー、表面的な冷たさと内心の葛藤を秘めた（弱めの）ヒロイン、というストーリーには合わないかもしれません。劇的なストーリーに、淡々とした作風が合わないように感じました。

評価で買って予想以上。「もったいない」はいいことだけど、それをしない、できない潔さの切なさが、笑いにくるまれて胸に染みる。奥歯を噛んで泣くのを堪えながら笑っている人の一生懸命さが見えて、泣きながら笑い、笑いながら泣いてしまう。４コマ漫画からのアプローチですが、絵が上手い（アキコさんが時々、すごい美人）ので、絵柄に対する不満足感もありません。買いです。