義姉の恋人を奪うなんて私にはできない。たとえこの子が父親を欲しがっていても……。

■ケンブリッジ大学で開かれたパーティの夜、ある事件を契機に、ポリーはイタリア人の従兄、マルコ・ダレッタと結ばれた。マルコはポリーが十三歳のときから憧れていた人だ。でも、彼は義姉の恋人。遠くから眺めているしかなかった。ポリーはこの一夜限りの愛の行為でマルコの子を身ごもるが、マルコへの不信感と義姉に対する罪悪感から彼のもとを去り、シングルマザーとなる決意をする。月日は流れ、息子のベンが三歳になった夏、ダレッタ家の洗礼命名式パーティに招かれたポリーは、単身でイタリアを訪れ、マルコと再会した。二人の心が通いだし、愛を交わそうとしたそのとき、偶然に落ちたベンの写真が、マルコの目に留まった……。

誘惑するのはやめて。私の上司と親しい関係にあるくせに。

■ファッション誌でスタイリストとして働くガブリエラは、真冬のロンドンからインド洋に浮かぶ島モーリシャスを訪れた。撮影隊の一行が到着する前に、撮影現場の下見をするためだ。この役目を立派に果たせば、アシスタントから昇格できるかも……。炎天下でタクシーを待っていた彼女は、一人の男性に注意を引かれる。浅黒い肌、サングラスをかけていても精悍な容貌のうかがえる彼は、なぜかガブリエラにかつての婚約者ピアーズのことを思い出させた。ばかね、あの人のことは忘れたはずじゃない。婚約者に裏切られた私の人生に必要なのは、男性ではなく仕事なのよ。ところが、ホテルの部屋でシャワーを浴びおえた彼女のところへ、ピアーズの面影を重ねた男性が突然やってきた。リックと名乗る彼は、どうやらガブリエラの上司アーシュラの不倫相手らしい。

■屈辱の記憶がよみがえる。もう少しで愛し合おうとした時、彼は……。
■アナスタシア・フレンチ。二十三歳。世界的に有名なロイヤル・シェイクスピア劇団の新進女優。もっと自信を持っていいはずなのに、自分に魅力がないと思いこんでいるのは、四年前の失恋が原因だ。そのころアナは十九歳。演劇学校の生徒だった。休暇で帰省したとき、父の屋敷でジェドに出会ったのだ。ジェドが何者で、どこに住んでいるか、何も知らなかった。ただひとつわかっていたのは、一目で男らしい彼の虜になったこと、そして、彼も同じ思いを抱いているということだった。だが、結ばれる直前、ジェドは彼女を拒んで去った。そして、今夜、ふたたびアナの前にジェドが現れた。相変わらず、精悍で繊細。彼は危険なほど魅力的だった。